AUTHENTIC RECIPE
Spaghetti alla Carrettiera alla Sicilianaスパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナ
荷馬車引き(carrettieri)が街道沿いで作った、火を通さない生のトマトソースを熱々のスパゲッティで和える一皿。完熟トマトを手で潰し、大量のにんにく・オリーブオイル・バジリコと合わせて常温で30分マリネし、果肉から出た果汁と油を一体化させることが唯一にして最大の技術。仕上げにペコリーノと、アンチョビを溶かした油で炒った香ばしいパン粉(mollica atturrata)をかけて食感と旨みの対比をつける。加熱しないぶんトマトの選別、にんにくの当て方、和える温度管理がそのまま味に出る。
本場イタリア島嶼部で受け継がれてきた作り方を基準にした本格レシピを、仕上がりを左右する判断点まで省略せずに紹介します。
AUTHENTICITY SCORE
本格度スコア
標準レシピの食材と手順です。代替食材を選ぶと、味・食感・工程への影響とともにスコアが変わります。
材料(4人分)
- スパゲッティ400g太さ1.9〜2.0mmのブロンズダイス製が望ましい
- 完熟トマト700g湯むきして種とゼリー部分だけを除き、手で粗く潰す。果肉から出る果汁は乳化の媒体なので捨てない
- エクストラヴァージンオリーブオイル110mlうち80mlを生ソース用、30mlをパン粉を炒る用
- にんにく4片芽を除き、2片は薄切り、2片は包丁の腹で潰す
- ペコリーノ・シチリアーノ(すりおろし)80g40gを和え用、40gを仕上げ用に分ける
- 固くなったパンの中身(生パン粉状)80g耳を除いた中身を手で粗くほぐす。炒って mollica atturrata にする
- バジリコ15g葉のみを手でちぎる。金気を嫌うため包丁は使わない
- 赤唐辛子(乾燥)1本種を除いて粗く砕く
- アンチョビ(オイル漬け)3枚細かく刻み、パン粉を炒る油に溶かす
- 粗塩(パスタ用)40g水4Lに対し10g/Lで加える
- 塩(ソース用)6g生トマトのマリネに使う
- 黒胡椒2g仕上げに粗挽きで
作り方
トマトの湯むきと下処理
- 1 鍋に水1.5Lを入れて強火で沸かし、別に氷水を張ったボウルを用意する。
- 2 完熟トマト700gのヘタをくり抜き、尻に浅く十字の切れ目を入れる。
- 3 沸騰した湯にトマトを2〜3個ずつ入れ、10〜15秒で皮が切れ目から反り返ったら網じゃくしで氷水に移す。
- 4 粗熱が取れたトマトの皮を指で剥き、横半分に切って種とゼリー部分だけを指でかき出して捨てる。
- 5 果肉を、切り口から流れ出た果汁ごとボウルに移す。ざるに上げて果汁は切らない。
完了の目安
皮と種・ゼリー部分が全量除かれ、果肉と果肉から出た果汁だけがボウルに入っている状態。
注意点
湯に長く入れすぎると果肉が煮えて生の香りが飛ぶ。皮が反ったら即座に氷水へ。
果汁を捨てるとオイルと乳化させる媒体がなくなる。除くのは種とゼリー部分だけにとどめる。
補足
水っぽさの原因は種を包むゼリー部分の水分なので、そこだけを除けば果肉の果汁は乳化の助けとして残る。
街道の元祖は皮ごと粗く潰す作り方だが、パレルモの食堂・家庭では湯むきして果肉の密度を上げるのが一般的で、本レシピはそちらを基準にしている。
生トマトソースを仕込む
- 1 ボウルのトマト果肉を、包丁を使わず手で握り潰して1.5〜2cmの不揃いな塊にする。
- 2 にんにく2片の芽を除いて薄切りにし、残り2片は包丁の腹で潰してから芯を残したままボウルに加える。
- 3 赤唐辛子1本の種を除いて指で粗く砕き、塩(ソース用)6gとともに加える。
- 4 エクストラヴァージンオリーブオイル80mlを回しかけ、木べらで底から10〜15回大きく返して全体を混ぜる。
- 5 バジリコ15gの葉を手でちぎってボウルに加え、軽く沈めるように1回だけ混ぜる。
完了の目安
トマトの塊が崩れずに残り、果汁とオイルがボウルの底に混ざり合って溜まっている状態。
注意点
バジリコを包丁で刻むと切り口が黒ずみ金気の匂いが出る。必ず手でちぎる。
潰したにんにく2片は和える直前に取り除くので、細かく刻まない。
補足
薄切りにんにくは食べる辛味、潰したにんにくは香りだけを出す役割で、2種の当て方を使い分けるのがパレルモ流。
塊を残すのは、和えたときに果肉の食感とソースの両方を口に残すため。
常温でマリネして果汁とオイルを一体化させる
- 1 並行(マリネの30分の間に)ステップ4のモッリカ・アットゥッラータを作る。
- 2 ボウルにラップはかけず、清潔な布巾をかぶせて常温(20〜25℃)で30分置く。
完了の目安
トマトから出た果汁とオリーブオイルが分離せず、ボウルを傾けるととろりと一体になって動く状態。
にんにくと唐辛子の香りがオイルに移り、鼻を近づけると青いトマトの香りと混ざって立ち上がる。
注意点
冷蔵庫に入れるとオイルが固まり果汁と乳化しない。必ず常温で置く。
補足
マリネは60分まで延ばしてもよく、その分にんにくが強く出る。
この30分が唯一の技術的な山で、ここで果汁と油が繋がっていないと熱いパスタでも乳化しない。
モッリカ・アットゥッラータ(炒ったパン粉)を作る
- 1 並行(パン粉を冷ましている間に)ステップ5のパスタ用の湯を沸かし始める。
- 2 アンチョビ3枚を細かく刻み、包丁の腹で潰してペースト状にする。
- 3 固くなったパンの中身80gを手で粗くほぐし、5mm前後の不揃いな粒にする。
- 4 フライパンにエクストラヴァージンオリーブオイル30mlと刻んだアンチョビを入れ、弱火で1〜2分、木べらで押し崩しながら溶かす。
- 5 アンチョビが完全に溶けたらパン粉を一度に加え、中弱火で5〜7分、木べらで絶えず混ぜながら炒る。
- 6 全体が濃いきつね色になったら火を止め、すぐに皿かバットに広げて冷ます。
完了の目安
パン粉が均一な濃いきつね色になり、木べらで混ぜたときサラサラと乾いた音を立てる状態。
香ばしい焼きパンの匂いが立ち、アンチョビの生臭さが消えている。
注意点
フライパンに入れたままにすると余熱で焦げて苦くなる。火を止めたら即座に広げる。
強火では表面だけ色づいて中が湿ったままになる。中弱火を保つ。
混ぜる手を止めると数十秒で焦げる。
補足
mollica atturrata はチーズを買えない層の『貧者のパルミジャーノ』で、シチリアでは今も必須の食感要素。
パレルモではモッリカを炒る油にアンチョビや塩漬けイワシを溶かすのが常法で、加熱しない生ソースに足りない旨みの芯をここで補う。
完全に冷めるとさらにカリッとする。冷めた時点で湿っていれば中弱火で1分追加で炒る。
パスタを茹で、皿を温める
- 1 並行(パスタを茹でている間に)マリネしたトマトから潰したにんにく2片を取り出して捨て、ペコリーノ・シチリアーノ80gのうち40gをボウルに加えて木べらで混ぜ込む。
- 2 並行(パスタを茹でている間に)盛り付け用の皿4枚を天板に並べ、80℃に温めたオーブンに入れて10分温める。
- 3 大鍋に水4Lを入れて強火にかけ、沸騰したら粗塩40g(10g/L)を加えて溶かす。
- 4 スパゲッティ400gを放射状に広げて入れ、菜箸で沈めながらほぐし、強めの中火でパッケージ表示時間より30秒短く茹でる。
- 5 茹で上がり1分前に、茹で汁120mlを計量カップに取り置く。
完了の目安
1本取り出して噛むと、中心にごく細い芯が感じられる程度の硬さ。
注意点
和えた後は一切加熱しないため、通常のアルデンテより硬く上げると芯が残ったままになる。表示30秒前で必ず噛んで確認する。
ペコリーノを早く入れすぎるとトマトの果汁を吸って固まる。パスタを茹で始めてから加える。
補足
和える30〜40秒の間に熱いパスタの余熱で芯が抜け、ちょうどアルデンテに落ち着く。
オーブンがない場合は皿に熱湯を張って10分置き、盛る直前に湯を捨てて布巾で水気を拭く。
取り置いた茹で汁120mlは、和えたときにオイルと果汁がゆるく繋がらない場合の調整用。
塩分10g/Lはソースを加熱しないぶんパスタ自体の下味として重要。
熱々のパスタで生ソースを和える
- 1 大きめの鉢に熱湯500mlを注いで内側全体に回し、1分置いてから湯を捨て、布巾で水気を拭き取る。
- 2 温めた鉢に、マリネしたトマトソースを果汁ごと全量移す。
- 3 茹で上がったスパゲッティをトングで湯切りし、熱いまま鉢のソースへ移す。
- 4 トングで下から持ち上げるように30〜40秒、20回ほど大きく返して全体を和える。
- 5 ソースがパスタに絡まず果汁が底に溜まるようなら、取り置いた茹で汁を大さじ2ずつ加えて同様に返し、最大120mlまで使って乳化させる。
完了の目安
トマトの果汁とオリーブオイルが白濁して繋がり、麺1本1本に薄く膜のように絡んだ状態。
鉢の底に透明な果汁の水たまりが残っていない状態。
注意点
パスタを冷ましてから和えるとオイルと果汁が乳化せず、水っぽいソースになる。湯切り後は間を空けない。
火にかけて和えるとトマトが煮えて生ソースの持ち味が消える。加熱は絶対にしない。
混ぜすぎるとトマトの塊が崩れて食感がなくなる。40秒以内で止める。
鉢を温めた湯を残したままソースを入れるとソースが薄まる。湯は完全に捨てて拭き取る。
補足
熱いパスタの余熱でトマトの角が取れ、生のままで香りだけが立ち上がるのがこの料理の狙い。
鉢を温めておくと和える間の温度低下を防げる。
盛り付けとパン粉の対比
- 1 オーブンで温めた皿4枚に、パスタをトングで持ち上げてねじりながら山高に盛り、鉢に残ったソースを等分にかける。
- 2 残りのペコリーノ・シチリアーノ40gを4皿に振り分ける(1皿10g)。
- 3 炒ったパン粉80gを各皿に約20gずつ散らし、黒胡椒2gを粗挽きで全体に挽きかける。
完了の目安
パン粉が湿らずに表面で立っており、赤いソースとの対比が見えている状態。
注意点
パン粉を和え込むと即座に湿ってザクザク感が失われる。必ず盛った後に上からかける。
盛り付けから提供までが長いとパン粉が湿る。散らしたら直ちに出す。
補足
シチリアでは食卓に炒ったパン粉の器を別に置き、各自が追加でかける習慣がある。
パレルモのカレッティエーラはバジリコ系かパセリ系のどちらかで組むため、バジリコを使う本構成では仕上げのパセリは載せない。
INGREDIENT OPTIONS
手に入る食材で、本格の輪郭を保つ
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナは、次の食材でも作れます。味や食感、手順への影響を確認して選んでください。
スパゲッティの代わりに
ヴェルミチェッリ
代わりに使える食材 · 本格度への影響なし
やや太くなり、生ソースの絡みが増して食べ応えが出る。
茹で時間をパッケージ表示どおりに取り、表示30秒前から噛んで確認する。
スパゲッティの代わりに
リングイネ
代わりに使える食材 · 本格度 -10点
断面が平たくなり、ソースが面で絡んで口当たりが重くなる。
完熟トマトの代わりに
ホールトマト缶
代わりに使える食材 · 本格度 -35点
生の青い香りが失われ、加熱由来の丸い酸味に寄って生ソースの核が消える。
湯むき工程を省き、ざるで缶汁を切って種を除き、手で潰す。
果汁が少ないためマリネ時間を45分に延ばす。
完熟トマトの代わりに
ミニトマト
代わりに使える食材 · 本格度 -5点
酸味と甘みが強くなり、ソースが軽く華やかになる。
湯むきせず縦4等分に切り、塩6gを当てて15分置き、出た果汁ごとボウルに使う。
手で握り潰さず、軽く押して割る程度にとどめる。
エクストラヴァージンオリーブオイルの代わりに
ピュアオリーブオイル
代わりに使える食材 · 本格度 -10点
果実味と辛味が消え、生ソースの香りの芯が弱くなる。
にんにくの代わりに
乾燥ガーリックスライス
代わりに使える食材 · 本格度 -20点
生にんにくの刺すような辛味が失われ、香ばしさだけが残る。
乾燥スライス6gをオリーブオイル30mlに10分浸してから生ソースに加える(オイルは生ソース用80mlの内数とする)。
潰したにんにく2片を取り除く作業は不要になる。
ペコリーノ・シチリアーノ(すりおろし)の代わりに
ペコリーノ・ロマーノ
代わりに使える食材 · 本格度 -5点
塩味が鋭くなるため、塩の量を控える必要が出る。
生ソースに加える塩を6gから4gに減らす。
ペコリーノ・シチリアーノ(すりおろし)の代わりに
パルミジャーノ・レッジャーノ
代わりに使える食材 · 本格度 -20点
羊乳特有の獣香が消え、甘くまろやかな旨みに変わる。
固くなったパンの中身(生パン粉状)の代わりに
乾燥パン粉
代わりに使える食材 · 本格度 -10点
粒が細かく均一になり、粗いザクザク感が弱まる。
炒め油を30mlから20mlに減らし、炒め時間を3分に短縮する。
バジリコの代わりに
乾燥バジル
代わりに使える食材 · 本格度 -20点
清涼感のある青い香りが失われ、干し草のような香りになる。
2gをオイルと同時にトマトへ加える。
マリネ時間を30分から60分に延ばして香りを移す。
赤唐辛子(乾燥)の代わりに
一味唐辛子
代わりに使える食材 · 本格度 -5点
辛味が均一に回り、粒感のある刺激が消える。
アンチョビ(オイル漬け)の代わりに
塩漬けイワシ
代わりに使える食材 · 本格度への影響なし
塩気と魚の旨みがより力強くなる。
流水で塩を洗い落とし、中骨を外してから刻む。
アンチョビ(オイル漬け)の代わりに
ナンプラー
代わりに使える食材 · 本格度 -20点
発酵香が前に出て、地中海的な丸みが薄れる。
油にアンチョビを溶かす工程を省き、オイル30mlだけでパン粉を炒る。
小さじ1をパン粉を炒め終える直前に鍋肌から加え、30秒混ぜて水分を飛ばす。
この料理について
カレッティエーレとは、荷馬車を引いて島内を行き来した運搬人のことです。19世紀のシチリアでは、彼らが街道沿いの宿で食事を取っていました。
この料理は、その運搬人が携えていた材料だけで作れる構成になっています。火を通さないトマト、生のにんにく、オリーブオイル、そしてペコリーノ。ソースを煮る時間も、そのための火も要りません。同じ名を持つ料理はラツィオにもありますが、シチリアのものは生のトマトを使う点で系統が異なります。
現在もパレルモやカターニアの家庭では、夏の暑い日に火をほとんど使わずに済ませる一皿として作られています。トマトが最も熟す時期にだけ、この料理は本来の姿になります。
QUESTIONS
よくある質問
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナにホールトマト缶を使ってもいいですか?
作れますが、完熟トマトをホールトマト缶に替えると本格度が35点下がります。生の青い香りが失われ、加熱由来の丸い酸味に寄って生ソースの核が消える。湯むき工程を省き、ざるで缶汁を切って種を除き、手で潰す。
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナにパルミジャーノ・レッジャーノを使ってもいいですか?
作れますが、ペコリーノ・シチリアーノ(すりおろし)をパルミジャーノ・レッジャーノに替えると本格度が20点下がります。羊乳特有の獣香が消え、甘くまろやかな旨みに変わる。
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナにリングイネを使ってもいいですか?
使えます。ただしスパゲッティをリングイネに替えると本格度が10点下がります。断面が平たくなり、ソースが面で絡んで口当たりが重くなる。
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナを失敗せずに作るコツはありますか?
つまずきやすいのは次の点です。湯に長く入れすぎると果肉が煮えて生の香りが飛ぶ。皮が反ったら即座に氷水へ。果汁を捨てるとオイルと乳化させる媒体がなくなる。除くのは種とゼリー部分だけにとどめる。バジリコを包丁で刻むと切り口が黒ずみ金気の匂いが出る。必ず手でちぎる。
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナを作るのにどれくらい時間がかかりますか?
4人分で合計54分です(準備25分・調理29分)。
スパゲッティ・アッラ・カレッティエーラ・シチリアーナは家庭で作るのが難しいですか?
難易度は5段階中2で、イタリア料理のなかでは作りやすい部類です。全7工程のうち仕上がりを左右するのは「熱々のパスタで生ソースを和える」「モッリカ・アットゥッラータ(炒ったパン粉)を作る」で、各工程に見極めの目安と注意点を明記しています。
READER REVIEWS
ユーザーレビュー
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次の週末は、コース料理を家で。
すべての皿が、いちばんおいしい瞬間に。
作りたい料理を選んだら、買い物も当日の段取りもChef Authenにおまかせ。タベリアのアプリが、前菜からメインまで、あなたのキッチンでひとつのコースに仕上げます。
- 買い物をひとつに献立と代替後の材料から、チェックできる買い物リストを自動作成
- 段取りをひとつに待ち時間や火入れを組み合わせ、全料理の工程を一本のタイムラインに
- レシピの先まで、答える火加減の見極めもアレンジの相談も、調理中の疑問にChef Authenが具体的な判断基準で回答